青空雨空
北太平洋の柱のもと・・・そこは、の指定席。
今日も足を投げ出すように座り、顔を上向けている。つまらなそうに。
「どうした、」
バイアンが隣にやってきた。
「ん〜、今日の空は、青空か、雨空か・・・」
つられて一緒に見上げるが、そこにの言う空はない。代わりに、目が届く限りに広がっているのは、水。海水が柱に支えられ、青くゆらめいている。
海底ならではの特殊な光景も、二人にとっては見慣れたものだ。
「ここにいると、晴れか雨かも分かんない」
口を尖らせ、膝を胸元に引き寄せる。
彼女の気持ちも、青空だったり雨空だったり・・・。いつものことだ。バイアンは微笑んだまま、の肩を抱き寄せた。
「空なんかどうでも、俺はと一緒にいるからそれでいいけどな」
「恥ずかしいセリフ」
ちょっと茶化して、それからはいつも思っていたことを口にしようかという気になった。
「でも、海の底ならではの、いいこともあるの」
「へえ、何?」
「うん。声がね・・・」
すぐそばにいる、大好きな人の、息づかいや体温を感じていた。
じわじわ広がる幸福感に、はにっこりする。
「バイアンの声って、もともととってもいい声だけど、海底だともっと素敵に聞こえるの」
思ってもみなかったことを言われて、バイアンはきょとんとしている。
「・・・そうかな」
ほら、こんなに短い言葉だって。
「そうだよ」
高い湿度や、水の下という珍しい環境が、声に深みときれいな反響を与えてくれる。
そして、いつも波紋のように優しくゆったり広がりながら、の心に届くのだった。
これは地上では決して得られない効果だということを、は独自に発見していた。
「だから、もっとたくさん、話をして」
甘えてもたれかかり、二人の距離をゼロにする。
再びそっと上を見て、はまた微笑んだ。
バイアンの言う通り。二人でいれば、いつでも楽しい。
青空でも、雨空でも。
・あとがき・
100題、久しぶりですね。
ネタはずっと前に考えていたものです。今、海将軍を書きたい気分なので、その勢いで書いてみました。バイアンを書くのも本当に久しぶり!
短いけどこんな恋人ドリームは大好きです。
以前、アンケートで「バイアンの声に注目したドリーム」というコメントをいただいていたので、それを加えてみました。
バイアンを語るとき、声は外せませんものね。
海の底だと、声が特殊な響き方をする、というのは、私がリアルタイム時に拙いながらオリキャラ混じりの小説を書いていたときに作り出した、勝手な設定(?)です。
今に至っても私の中では生きているので、当然のようにそう書いてみました。
H17.9.9
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