飽きないの?
「飽きないの?」
驚かそうといういたずら心でいきなり声を発したのに、彼は優雅に振り向いてあでやかに微笑んだ。計算され尽くした『自分の見せ方』に、感心こそすれいやみだなんて思わない。ましてや『男のクセに』なんてことは。
「飽きないよ」
ミスティは大きな姿見からようやく離れた。
「美しいものを見ていて、飽きることはない」
金の髪をさらりかきやり、何気もなく言ってのける。
彼が鏡に映る自分をうっとり眺めているなんていつものこと。だから私は、わざと気配を殺して入っていく。邪魔をすると悪いかな、という気配りと、いつまでそうしている気なんだろう? という好奇心で、しばらく黙って見守っているのだ。
でも、放っとけば本当にいつまでも自分自身を見つめているミスティにしびれを切らして、結局私が声をかけてしまう。
実際にミスティは綺麗だ。まさしく天与の美貌(自分は神に選ばれた者だ、といつも彼は口にしている)、聖闘士として無駄なく磨き上げられた肉体も。それはそれは美しい。こう近くで見つめると、ほうっとため息が出てしまうほどに。
そして、彼が自分の美のためにどれほどの努力を払っているかも、私は知っている。無論、それは並大抵のことではない。尊敬に値するとすら思う、皮肉などでは決してなく。
一度は青銅聖闘士の星矢に破れたものの、戦いにおいて自らの肉体を傷つけるなど白銀聖闘士としてはあるまじきことである、という持論に変わりはなく。そのため、日々技を磨くことを怠らない。
粉骨砕身の上に、この類まれな麗しさと強さは成り立っているのだ。ただ安穏として、容姿や能力について不平を並べ立てるだけのつまらない男とは違う。
「可愛い」
近付いて、最上級の微笑みを向けて。彼は軽いキスで迎えてくれた。
「今日も素敵だよ」
二人でいるときには、私だけを見てくれる。そしてまるでお姫様のように扱い、愛を囁いてくれる。
自分の美や強さのみならず、恋にも手抜かりないのだから・・・やっぱりこの人はスゴイ。全てを維持するのには膨大なエネルギーが必要なはずだけれど、尚こんなにも涼しげに笑いかけてくれるのだ。
周りからは不思議なカップルと言われているのを知っている。彼のことを良く思っていない人たちがいることも。
でも、構わなかった。私たちのことは私たちしか知らないのだし、他の人が知る必要もないのだし。
「・・・飽きないの?」
ずっと見ているミスティに笑いかけた。単に反復の遊びのつもりで。
そうは言いながら、実は私も飽きない。ミスティとこうして見つめ合っているのが、好き。
最初はこんなにも美しい男の人にじっと見つめられることに慣れず、臆してばかりいた。決して自分の容姿に自信があるわけでもないし、女性よりも美しい男性に見つめられるというのは、屈辱的ですらあったから。
だけれど彼はやめなかった。嫌がると、「どうして? はこんなに綺麗なのに」と当然のように言ってくれた。他の男だったら歯が浮くようなセリフも、ミスティの口からなら何故か違和感がない。それに、実際に彼は私をすら美しく変えてくれた。メイクの仕方、ヘアスタイル、ファッション・・・押し付けられたわけじゃない。私が求めたことに関して、的確できめ細やかなアドヴァイスをしてくれたのだ。今ではすっかり見違えて、街を歩いていて男性に声をかけられないことはない。
おかげで、私にあったコンプレックスは消え、大好きな彼の瞳を真っ直ぐに見上げることが出来るようになった。
私はミスティに恋をして、そして綺麗になった。
外見だけじゃなく、心も、体も。
私たちは、一緒にいて飽きない。
見つめ合っていて、飽きない。
恋をしているから。
・あとがき・
バカップル万歳。
何となく一人称(しかも硬めの一人称)にしてみました。真面目に語っているのがなんか笑えるよ、ちゃん・・・。
ネタはそもそも、しばらく前に、ガクト(つづりが分からない)をテレビで見ていた友達が、「何にせよあれだけ『自分を美しく見せる』ということに対して努力をしているのはスゴイと思う」と言ったことからです。やけにそのセリフが頭に残っていたのよ。確かになあって。
ミスティは本当のナルシストだけど、それだけの自信を持てるのはスゴイよね。原作でミスティのすっぽんぽんを見たときにはものすごいショックを受けましたよ。「この人、男だったのかーーーッ!?」って。その衝撃は今でも忘れられません。
その当時、私はジャンプを読んではいたけれど、聖闘士星矢はそんなに熱心に読んではいなかったし、車田先生のこともよく知らなかったので、ミスティを女と信じて疑っていなかったのです。
そこに来てあの問題シーンでしょ・・・いやはや。
聖闘士星矢に、ひいては車田マンガにこんなにものめりこむようになるのは、それからもっと後。アニメで宝瓶宮が放送されたときです。
そう考えれば、ある意味ミスティってインパクト部門No.1キャラでしたね、私にとって。白銀聖闘士のドリームは初めてだ。白銀ってあまり好きな人いないからなぁ。
ちゃんは気配を消せるから、聖闘士かも知れないね。
私もミスティのアドヴァイスを受けて変身してみたい・・・。少しは美しくなれるかしらん。
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