いい人
「ここに泊まっていっちゃおうかなー」
みんなでさんざん遊び騒いだ帰り、何故か金牛宮に居座って、はこんなことを言う。
ふざけてばかりの奔放な態度に、もはや慣れ切っているアルデバランは、いつものように呆れながらも落ち着いたまま。
「家まで送っていってやるから、ちゃんと帰れ」
ソファにへばりついているを、片手で軽々引き離す。
「面倒〜眠い〜」
多少のアルコールに、力を抜かれたフリをして。今度はアルデバランの腕にしがみついた。押しても引いてもビクともしない、その逞しい、腕。
「泊まる〜」
「まったく、嫁入り前の娘が」
まるでお父さんみたい、とは笑ってしまうけれど、彼は至って真面目なのだろう。
「大丈夫、アルデバランなら安全だもん。いい人だし」
「・・・いい人、か」
それはつまり、どうでもいい人、とか都合のいい人、ということだ。
実際アルデバランは『いい人』と言われることが多いが、普段は気にも留めてはいなかった。
目の前の女性・・・の口から出た言葉でなければ。
「このままぶら下げて連れて行ってやろう、の家まで」
落胆を表には出さず、言葉のままずんずん歩き出す。はケラケラ笑って足をばたつかせ、尚も「やだー泊まる、泊まりたい!」などと言い張っている。
「あのなぁ、俺だって男なんだから、安全なんてことはないんだ」
腕が疲れたであろうを床に下ろす。アルデバランは少し目をそらしているので、まるで自分自身に言い聞かせているようにも見えた。
「を泊めて指一本触れないなんて、出来るはずはないだろう。他の子だったらともかく」
言葉に漂う本音を捕まえた。の目がきらんと光る。無論、酔ってなどいない。
他の子だったらともかく、ということは、例え他の女の子だったらいい人のままでいられたとしても、相手ではそうはいかない、ということで・・・つまり、相手にとって自分は特別な存在、ということに他ならないではないか。
ただの一言に随分都合の良い解釈を、と言われればそれまでだが、ここまで思い切った以上、逃すわけにはいかない。はもう一度手を伸ばし、さっきとは違うしなやかさでアルデバランの腕に触れた。
「・・・いいよ」
「?」
見上げた顔いっぱいに、ふわっと溶けそうな笑みは、誘うための無防備さなのか。
「貴方だったら、いいよ」
「・・・」
理性がほどける。
こんな表情で見つめられては、とてもいい人でなんて、いられなくなる。
着ているものを脱いで、全てを晒して。ドキドキしながら、抱き合ってみる。
言葉や視線を交わすより先に。そんなことで、互いの気持ちをダイレクトに確かめ合った。
「本当に、いいのか」
みんながを狙っているように見えていた。の本心がどこにあるのか、気になってしょうがなかった。
「・・・うん」
優しいけれどお兄ちゃんみたいなアルデバランに、恋愛対象として見てもらえてはいないのではないかと、ずっと不安に思っていた。
こんなふうにベッドにいるなんて。思いがけないけれど嬉しい展開に、言葉が追いつかない。ただ気持ちと体の昂ぶりだけは持て余すほど激しくて、二人はそれをそのままぶつけ合うことしか出来なかった。
「・・・」
大きな体の下にいても、押しつぶされるような恐怖なんてない。どこまでもゆったりと、包み込んでくれるような大らかさは、こんなときでも変わらないから。
「アルデバラン・・・大好き」
それだけ言うのが精一杯で、あとは甘い吐息に紛れた。
アルデバランの無骨な手指で与えられる愛撫は、巧みとはいえず何の駆け引きもないけれど、その愚直さがかえってを感じさせる。
いつか我を失い没頭してしまうほどに。
「は、ここも小さいんだな」
その指が、秘所に沈み込む。熱くこぼれる中心部は、それだけでからみ、締め付けてくる。
「大丈夫かな」
思わずこぼしてしまった言葉は、小さなに届いているのかいないのか。
壊してしまいそうで少し怖い。けれど止められるものでもない。
アルデバランはにひとつキスをあげると、軽く抱きかかえるようにした。
いよいよその時が来たことを知り、夢見ごこちのままは身を委ねる。
「んっ・・・」
「キツい、な」
滴るほど潤ってはいるが、自らを一度に預けるのにはとても無理のある狭さだ。
それでもゆっくりと、進めてゆく。それでまた、高まる。
「ひぇ〜ムリだよぉ」
手をぱたぱたさせて、は何故か笑い出しそうだ。茶化したくなかったので、もう一度キスをして黙らせた。
「力を抜いて」
厳かな調子と同時にぐっと圧迫感が増す。
それが苦痛に近付いたとき、突如その正反対の感覚へと導かれた。
「・・・っあ、あ」
紙一重の快楽に、思わず声を上げる。
体の中いっぱいに彼を感じているのだと、肌で理解をした。
そして幸せだと・・・思った。
それからは、聖域にて、アルデバランとが一緒にいる場面が幾度となく目撃された。『兄妹みたいだ』『いや父娘みたいだ』とある者は悔しがり、またある者はからかうように言いながらも、皆は二人の仲の良さを認めざるを得なかったのだった。
「今日は全部おごってやるぞ!」
給料日の彼は気前がいい。いや、給料日に限らず、常に鷹揚ではあるけれど。
「ありがとう! やったー! アルデバランってやっぱりいい人だね〜」
笑いながらすり寄ってくるを、軽く抱き寄せる。微笑を向けて、並んで歩き出した。
みんなに『いい人』と言われるけれど、は、だけが、特別な意味を持たせられるのだと知っている。
「大好きーアルデバラン!」
とてもとても、幸せだ。
・あとがき・
突発アルデバランドリーム。100題からも割り当てられなかったくらい突発。
というのも、この間、風邪で伏せっていたとき夢を見て。熱にうかされてダルくて気分良く。
えーと、どんな夢だったかというと、ちょっと恥ずかしいのですが。
畳の部屋に布団がたくさん(12か14?)敷いてあって、そこにそれぞれ黄金聖闘士が寝ているというのですよ!! もうこの時点でキャ〜ですね。
で、かづな、その中から一人選んで布団にもぐりこんでもいいと言われたわけです。
そこで私が選んだのがアルデバラン。「アルデバランなら何もしないだろうから安心できる」とか何とか言って。
でも、アルデバランはニッと笑い、「俺だって男だから云々」と・・・。
その先のことは、とても言えません!
いいのか人妻(いやむしろ妊婦)、こんな夢!?
これはネタだと思い、ほぼそのままの形をドリームにあてはめてみました。一人盛り上がって書きたくてしょうがなくなっちゃった。
アルデバランって好きなキャラですからねー。基本的に、体の大きなキャラって好きなんです。といっても、実際に好きになる相手がお相撲さんみたいな人、というわけではないけど。
体が大きいからといって、アルゲティやロックが好きなわけじゃないけど。
でもモーゼスとかギガントとかは割合好きだ。ネタ浮かべばドリーム書いちゃいたいくらいの愛はあります。
アルデバランはね、でも別格かな。大きいだけじゃなくて性格いいし洞察力もあるし、素敵な男性ではないですか。
ドリームサイトさんを見回しても、アルデバランのドリーム自体少ないし、こういうベッドシーンがあるドリームとなればもっと少ないと思う。これはかづなのラブとドリームで出来上がった話!
アルデバランって体でかいだけに、実際にアレをああすると女性にはなかなかキツいかな・・・とか勝手に下品な妄想をしてしまいました。ゴメンナサイ。
彼の髪型は原作とアニメとで大きく異なるので、描写はしませんでした。お好きな方でご想像ください。「いい人」という言葉が出てきたのでそれをそのままタイトルに使いました。
この言葉についての思い出といえば、まだ私が就職したてだった頃、同僚だった年上の男の人に「○○さんっていい人ですね〜」と言ったら、「みんな、心に大切な人を持ちながら『いい人』って言うんですよね」と返されたことです。
自分ではほめたつもりだったんだけど・・・このとき私は、『いい人』って言葉はむやみに使えないな、と思ったものです。
H16.2.3
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