5倍返しホワイトデー
冥界三巨頭のひとりに名を連ねる、天雄星ガルーダのアイアコス。彼の恋人はという、それは可愛い日本人の女の子だ。
「日本では3月14日をホワイトデーといって、男性が女性にバレンタインデーのお返しをする日なんだそうですよ」
「へえ、それは知らなかった。ありがとミーノス」
は気を遣わせまいと何も言わなかったのだろう。何て奥ゆかしいんだ、とニヤけつつ、教えてくれたお礼を告げる。と、ミーノスは、「まだ続きがあります」と人差し指をぴっと立てて近付いてきた。
「俗に『3倍返し』といいまして、女性は、バレンタインデーにしたプレゼントの3倍のお返しを期待しているという話です」
「い、意外とがめついんだな、日本の女の子は。は例外だろうけど・・・でもそういう習慣なら、やらないわけにもいくまい。待てよ、バレンタインデーにがくれたものといえば・・・その3倍か、ふっふっふ・・・」
「何を一人で笑ってるんです、気味悪い」
「おいお前ら、仕事に戻れ!」
向こうでラダマンティスが怒鳴っているが、どこ吹く風。アイアコスの頭の中はすでにホワイトデー一色に塗り込められていた。
そして迎えた3月14日、がいつものように彼の部屋に行くと、いきなり熱烈な抱擁とキスとに迎えられた。
「ちょっ・・・」
息つく間もなくベッドへと引き込まれ、もっと激しい口づけの嵐に見舞われる。
「まっまっ待ってよアイアコス!」
どうにか声を出せたころには、衣服などとうに乱れ切っていた。はぜいぜい言いながら、彼のたくましい肩の辺りを押し戻そうとする。
「何するのよー」
「何って・・・」
両腕の中にしっかりと、愛しい身体を閉じ込めたまま、アイアコスは笑う。
「今日はホワイトデーだろう」
こんなに近くでこの笑顔を見せられると、もつい、だまされそうになる。
「よ、よく知ってるね。でもなんでいきなりこんな展開!?」
「だってバレンタインデーの夜、いっぱいサービスしてくれたじゃないか。ホワイトデーは3倍返しっていうけど、俺はその辺の男とは違うから。そうだな、5倍返しくらいはしようと思ってさ」
「え・・・」
「それなら今から始めなきゃ、朝になっても終わらないだろ?」
「えええーっ!?」
の頭の中に、一か月前の夜が早送りで思い出される。あれの5倍? 冗談じゃない!
「わ、私、チョコレートと時計をあげたでしょ」
「ああ、それならこれ」
サイドテーブルの上を無造作に指さす。リボンのかかったきれいな箱がふたつ、置いてあった。
「クッキーとネックレス。こういうの贈るんだろ? ちゃんと分かってるさ。でもこんなモノよりも、メインはこれだもんな」
耳もとから首筋へ唇を添わせる。の弱いところだ。思わず小さな声を洩らしてしまう。
「こ、これ、メインかなあ!?」
バレンタインデーのときも、むしろメインは高級チョコレートと腕時計のつもりだったのだが。
「それにしても日本の男はタフだね。いつもの3倍頑張るなんてさ。でも俺は5倍だから、見てろよ」
は見つけてしまった。向こうのテーブルに、ドリンク剤の空き瓶が5、6本転がっているのを。
「いやあアナタ勘違いしてるってば・・・」
「もう何も言うな。お前は何もしなくていい、俺が全部してやるから」
楽しそうに笑って、服を開く。この上なく可愛らしく柔らかな膨らみに、吸い付けられるようにキスをした。
「話がかみ合ってない・・・あっ・・・」
また弱いところをせめられて、とろかされてしまう。
もういいか。半ば諦めて、はそっと手を伸ばし、アイアコスの黒髪に触れた。
彼の体力よりも、むしろ自分の体がもつかどうか、心配だけれど・・・。
「ホワイトデーっていい習慣だな。も嬉しいか?」
「うんまあ・・・こういう習慣じゃないんだけど本当は・・・」
「照れるなよ。して欲しいことあったら遠慮なく言えよ、何でもしてやるからさ」
心底、楽しそうな彼の笑顔を見ると、朝まで溺れてもいいかな、という気になってくる。
体のうずきも、もう止められないから。
「愛してるよ、。これもいつもの5倍言おう」
「いつもいっぱい言ってくれてるじゃない」
「それでも、5倍言うよ。・・・愛してる、愛してる・・・」
囁きは魔法の言葉で、の体に甘く染みてゆく。
「・・・愛してる、アイアコス」
熱い吐息で、囁き返した。
・あとがき・
ああ今日はホワイトデーだな・・・とぼんやり思っているうちに組み上がった話です。
ちょうど午後、時間が取れそうだったので、ばーっと書いてみました、短い話。
私の書くアイアコスはいつもエロエロなので、「可愛いアイアコス」を書きたいなーとこのところずーっと狙っていたのですが。
結局またこんな役になってしまいました。
今度こそ可愛いアイアコスを書きたいよ〜。
H17.3.14
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